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第63回 イオン反応研究会

日  時:
2014年11月29日(土) 13時~
会  場:
島津製作所関西支社マルチホール 大阪市北区芝田1-1-4大阪梅田 阪急ターミナルビル14階
JR大阪駅ホーム北側に隣接するビル。阪急17番街のエレベータで14階まで

「生物を代謝物で見る:MSのインターフェイスとアノテーション」

代謝は生命現象や生物の状態を直接映す鏡と言える。現在、生物の代謝を見る方法としてMSは最も有用な手法として浸透しており、既にキャピラリー電気泳動・質量分析(CE-MS)はルーティンとして生命科学研究に利用されている。最近は生命現象や病理を代謝物でもっと見たいというニーズが高くなり、生物の代謝物を直接MS分析する要望も高い。今回、代謝物MSのインターフェイスとして一細胞MSやイメージングMSを駆使し代謝物を時間・空間的に計測し生命現象を明らかにしようとする研究と、生物の生体ガス分析から病理診断へ応用しようとする研究を紹介する。さらに生物の代謝の範囲を広げ、いろいろな代謝をモニタリングしようとした時、代謝物アノテーションとイオン化が問題となっている。講演でも代謝物アノテーション戦略やイオン化についてディスカッションする予定。

プログラム:
13:05~13:50
神野 直哉 先生 (国立循環器病研究センター)
MSによる呼気診断: 質量分析法を用いた生体ガス測定技術の現状
生体内で生成される代謝成分の一部は呼気や皮膚ガス中に放出されるため,これらの生体ガス成分は生体内代謝の有力な情報源となりうる.例えば一酸化炭素は喫煙や慢性気道炎症と相関があり,一酸化窒素は喘息と相関がある.また,アセトンは糖尿病と関連することが知られている。これらを含む生体ガス成分と様々な病態との関連性に関する研究においては,半導体センサーや化学発光を利用した分析装置以外に,GC-MSをはじめ,PTR-MSやSIFT-MSなどの質量分析法も用いられている.我々の研究室では,それらの生体ガス成分に加えて,生体ガス中に含まれる活性酸素種の測定法に関しても研究を行っている.生体内で生成される活性酸素種は重要な役割を持っており,その中でもヒドロキシルラジカルは種々の心血管障害や酸化ストレス疾患における組織・臓器障害をもたらす.通常,ヒドロキシルラジカルは酸化ストレスマーカーや電子スピン共鳴を用いて測定されるが,我々の近年の研究より,大気圧イオン化質量分析法によって直接計測できる可能性が示唆されている.
13:50~14:35
三浦大典 先生 (九州大学・先端融合医療レドックスナビ研究拠点)
MALDI-MSによる時空間分解メタボロミクスと代謝物同定戦略

我々はこれまで、MALDI-MSを基盤とした低分子量代謝物分析に対する有用性にいち早く着目し、一連の技術開発を精力的に推進してきた(Anal. Chem. (2010a), Anal. Chem. (2010b), Anal. Sci. (2012), Metabolomics (2013), Sci. Rep. (2013), Anal. Chem. (2010c))。MALDI-MSはレーザー脱離イオン化法の一種であるため、原理上クロマトグラフィー等の分離技術と組み合わせる事は出来ない。一方で極めて高感度(sub-amolレベル)な分析技術であり、また逆に分離過程を省略することで極めて短時間で測定が終了する。このような特性を生かし、我々は高い再現性・定量性で運用可能な超高速代謝プロファイリング技術(サンプル調製1分、1検体の分析時間15秒、384 wellプレートを一斉分析可能)の開発に成功した。さらに上記技術を質量分析イメージング(MSI)に適用することで、世界に先駆けてメタボロームに時空間分解情報を付与し、疾病動物モデルを用いて組織内微小領域における代謝動態を明らかとする事に成功した。一方で、スペクトル上で検出したピークから化合物の同定が必須となるが、MALDI-MSにて得られるデータは一次元(m/z情報のみ)であり、化合物の同定は困難を極めた。そこで申請者らは、超高分解能質量分析により13C・15N・18O・34S由来の同位体ピークを定量的に測定することで、スペクトル情報から一義的に化合物の組成式を決定できる測定法の開発に成功した( Anal. Chem. (2010d), Anal. Chim. Acta (2014))。さらに、これまで勘と経験に頼っていたMALDI-MS条件に対して、化合物情報を元にした計算により検出限界などの結果を予測することが可能であることを初めて明らかとした( J. Am. Soc. Mass Spectrom. (2014))。本講演では、新規マトリックスのスクリーニングや合成開発など、最新のデータを紹介すると共に、MALDI-MSの可能性について議論したい。
休憩(25分)
 
 
15:00~15:45
杉村 夏彦 先生  (早稲田大学理工学術院 物性計測センターラボ)
約600検体の有機化合物から見るイオン化:
 極性-分子量プロットによるイオン源選択マップとESI付加イオン予測

当ラボで受託した約600の高分解能質量分析試料についてDART・ESI・FAB-MSを測定し,各イオン源の特性を評価した.構造式から簡易に極性を求める手法を導入し,この結果を極性-分子量プロットとしたところ,各イオン源が苦手とする領域を明らかにすることができた.我々はこれをイオン源選択の指針となるマップとして活用している.また,ESIにおける付加イオン(H+, Na+)選択性を明らかにし,対象化合物の元素組成から付加イオンを高い確率で予測する手法を考案した.当ラボで開発したこれら2つのツールは,特に質量分析初心者にとって使いやすい(教えやすい)指標となっている.
15:45~16:30
水野 初 先生 (理研 QBiC)
ナノエレクトロスプレーイオン化による1細胞ダイレクトメタボロミクス

生体メカニズムの詳細な解明のためには、生命を構成する最小単位である細胞内における分子の動きを追跡することが必要である。そこで私たちは、1個の細胞を生きたままの状態で細胞内成分を採取、nanoESIでイオン化、質量分析することができる「Live Single-cell MS」を開発した。本発表では、細胞内小器官を選択的に採取することにより、代謝物や代謝経路の細胞内局在を解析する「1細胞オルガネラメタボロミクス」をはじめ、細胞膜成分を標的とした「1細胞リピドミクス」について紹介する。
16:40~
情報交換会
参加申込み:
参加希望の方は、 (1)氏名、(2)所属、(3)メールアドレス、(4)会員/非会員の別を添えて、
下記メールアドレスにお申し込みください。
 ion13_%_mssj.jp (送信の際は、_%_を@に変えてください)
参加費:
無 料
講演会終了後、簡単な懇親会を予定しております。懇親会に参加される方は当日会場にてお志を集めさせていただきます。
幹事:
山垣 亮 (サントリー生科財団)(第63回担当幹事)
菅井俊樹 (東邦大)、関本奏子(横浜市立大学)、竹内孝江 (奈良女子大)(部会長)