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趣意書
輝き続ける質量分析の未来
-19th IMSC (京都, 2012) に向けて-


 質量分析の未来はいつでも明るく開かれています。19世紀から21世紀の現在に至るまで、質量分析は常に発明・発見・開発のイノベーションを果たし続け、現代科学と技術および工業等になくてはならない地位を確立しています。この源泉になっているのは、原理や機器が現在でも新たに創出される可能性の高い特異な分野であることです。

 気体中での電気現象や荷電物質(イオン)の性質を調べるために発達してきた質量分析学は19世紀にまで遡ります。電子を発見したJ.J.トムソンは、19世紀末より電子の質量や気体中正イオンの質量を計測する質量分析器を開発し次々と新しい発見を重ねるうちに、その微量分析能に注目し、化学の分析手段としてすばらしい性能をもつことを常に主張していました。現代の質量分析(mass spectrometry)の考え方の基本は、“質量電荷比(m/z)値の差異のみに基づいて化学物質を探求する”というトムソンの思想をそのまま受け継いでいます。現在注目されている大気(ambient)イオン化法やイオンモビリティ法も、19世紀末から20世紀初頭にかけて起こったX線の発見や陰極線や陽極線の解明のなかで、すでに基本的な発見がなされていました。この頃、大気中のイオンの移動度を計測するために、エッフェル塔に登ってイオンの移動速度が計測されていました。しかし、一世紀近い研究にもかかわらず、1970年近くになってもイオンをつくり出す古典的な手法である放電現象については、“あまりにも複雑でわからないことが多い”と言わしめています。現代の質量分析技術にも放電がよく使われていますが、その基礎過程には不明な点が多いところに、質量分析が今後も発展し続ける理由があります。つまり、未来にイノベーションが期待されるということです。質量分析には、このようなイノベーションの種がたくさんあるために、現在でも機器開発が盛んに行われていると考えます。

 第58回総合討論会は、第1回アジア・オセアニア質量分析会議と合同開催となります。歴史ある質量分析学に関わっておられる多くの方には、つくばでの総合討論会に是非参加され、歴史の1ページに加わっていただけますよう、お待ち申し上げております。
第58回質量分析総合討論会
第1回アジア・オセアニア質量分析会議
実行委員長 高山光男


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