開催趣意書

 日本質量分析学会第64回質量分析総合討論会を,2016年5月18日(水)~20日(金)の3日間,大阪府吹田市にあるホテル阪急エキスポパークを会場として開催いたします.
 J. J. Thomsonが20世紀初頭に質量分析装置を開発して以来,100年強の歴史の中で,質量分析は様々な分野で必要不可欠な分析技術として発展してきました.その過程では,質量分析装置やそれに付随する様々な技術の開発,質量分析の特徴を活かした研究分野の開拓など,装置開発者と応用研究に携わる研究者の密な連携が重要な役割を果たしてきました.タンパク質のような生体高分子の質量分析が実用になるとは誰も思っていなかった時代に,どうしても測定したいという研究者の思いが装置開発者を動かして実現し,今や当たり前の技術になっているというのは,その一例です.質量分析が今なお発展し続けているのは,様々な分野の研究者が一同に会して議論する総合討論会という場をもち,また基礎的な研究と種々の応用研究が緊密に結びついているという,他には見ることができない学問分野であるからです.
 そこで,今回の総合討論会は,これまでの質量分析の発展を振り返りつつ,これから先の20年で質量分析がどのように発展していくのかを考える場にしたいと考えています.そのために,今後5年,10年,20年後に質量分析はどのような発展をしていると思うか,どのようになっていて欲しいのか,どのような研究をしているかという点について,参加者の皆様で意見交換ができるようなパネルディスカッションを企画しています.また,時間薬理学の第一人者であられる大戸茂弘教授(九州大学大学院薬学研究院)、静電型イオン蓄積リングを開発し原子分子反応過程を研究されている東俊行博士(理化学研究所),そして,同位体比の測定から太陽系の起源と進化に関する研究を行っておられる寺田健太郎教授(大阪大学大学院理学研究科)を特別講演としてお招きし,歴史的な背景,最新のご研究や今後の発展等を拝聴する予定にしております.
 質量分析総合討論会には,全国の国立・公立・民間の大学や研究機関,そして,多くの国内外の企業から多数の研究者が参加されています.また,質量分析が利用される分野は多岐にわたるため,3つのパラレルセッションで12のセッションを企画する予定です.多くのご発表を3日間で納めるにはこのような運営で行わざるを得ませんが,「質量分析学」を主軸に研究する方々が1年に一同に会する折角の機会ですので,皆様方には是非ご参加頂き,様々な方面から活発なご討論,情報交換を行っていただければと思います.
 例年通り,口頭発表,ポスター発表,企業展示及びワークショップ等の企画を予定しております.また,特に今回新たな企画として,質量分析夏の学校などで活躍している学生や若手研究者に研究発表をしていただくセッションも企画しています.例年通り,10件程度のベストプレゼンテーション賞を口頭及びポスター発表から選定する予定ですので多くの若手の方による発表を期待しておりますので奮ってご参加ください.
 最後に,第64回日本質量分析総合討論会を実りある会とするため鋭意準備を進めているところですが、この機にご発表、ご参加を是非予定され、研究発表のみならず、活発な意見・情報交換を通じて交流を深めていただきたいと願っております.

第64回質量分析総合討論会
実行委員長 豊田 岐聡