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第66回イオン反応研究会&第144回関東談話会講演会

「多様な生体分子の物性とイオン化、断片化、質量分離と検出
:東京医科歯科大学・笠間健嗣先生 退職記念講演 と これからの質量分析」

主 催:
日本質量分析学会 イオン反応研究会 & 関東談話会
日 時:
2016年4月23日(土) 13時~18時
会 場:
東京大学 医学部教育研究棟 2階 セミナー室 (東京・本郷)
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/information/map_hongoarea.html
最寄駅:地下鉄丸ノ内線本郷三丁目駅

生体分子は脂質からペプチド、代謝物まで多様な物性を持つ。質の高い質量分析をする上では試料の物性から装置の原理まで色々なノウハウや経験が必要であり、イオン化から質量分離装置の特性や検出系まであらゆる知識を総動員することで、ハイクオリティーなMSデータが初めて得られる。昨今のMS装置では、装置開発により容易に“ある程度の”クオリティーMSデータが得られるようになり、イオン化や質量分析装置を理解していなくとも“ある程度”には装置を操ることができる。残念ながら過去に培われた貴重なノウハウや経験が顧みられない風潮はあるが、“トップレベルの”MSデータを取得するには多様な生体分子の物性とイオン化との関係、その原理、質量分離装置の特性と高感度化メカニズムを理解していないとそのレベルには到達しない。質量分析のイオン化や装置が飛躍的に向上してきた1980年代ごろから現在までの研究において「質量分析」に関わるノウハウや経験・知識が培われてきた。我々は今その知識を、試料の化学物性、イオン化メカニズムやイオン挙動原理から理解し、学問的に系統化した「質量分析学」として後世に伝える役割がある。本研究会では「多様な生体分子の物性とイオン化、断片化、質量分離と検出」と題して、今年現役を退く東京医科歯科大学・笠間健嗣先生にご講演をお願いした。これまでの多様な生体分子質量分析のノウハウと、それを理解するためのイオン化メカニズムや化合物特性、装置内のイオン挙動原理をどのように結びつけるのか?を先生の最終講義として拝聴したい。
また現役研究者として数名の先生をお招きし、「イオン反応」についてご自身の研究をご講演いただく。

プログラム:
13:00‐
はじめに
13:10-13:30
・山垣亮(サントリー生命科学財団)
「MSの構造異性体識別について」
13:30~14:15
・杉村夏彦(早稲田大学)
「受託高分解能質量分析実務から見えたイオン源特性 -約600の化合物で評価したMSイオン源適応範囲とESI付加イオン選択性-」
私たち早稲田大学・物性計測センターラボは大学の分析センターとして学内にさまざまな分析サービスを提供しています.特に受託分析では多岐にわたる研究室から多種大量の試料をお預かりするため,私たちにも貴重な知見を与えてくれます.本研究ではこれらの経験的に得られた(知っている)知見について,大量かつ多様な測定結果をretrospectiveに解析することにより一般化・法則化することを試みました.質量分析においては適切なイオン源を選択することが重要となりますが,このイオン源選択については従来から極性-質量による2次元のイラストレーションが知られています.ところが多くのイラストレーションにおいて「極性」について明確に定義されておらず,実際のイオン源選択には利用することが難しい状況にありました.そこで構造式から高速・簡便に極性を算出するtPSAを採用することで極性-質量によるイオン源適応範囲を(おそらく初めて)実際の測定データに基いて作成し,DART・ESI・FABについてその特性を表現することに成功しました.[1] ESI付加イオン(H/Na)選択性についてはメタノール移動相条件下において元素組成と相関があることを見出しました.構成元素として酸素を含む化合物はNa+付加イオンを生成し,酸素を含まず窒素を含む化合物はH+付加イオンを生成する傾向があることから,これを「窒素-酸素ルール(NO rule)」と命名し現在ではESI付加イオン予測として活用しています.[2] 私たちは日常業務から得られた知見について特に初心者に向けたフィードバックを実施し,測定依頼者と協力関係の強化を目指しています.
1) Sugimura et al., Eur. J. Mass Spectrom., 21, 91-96 (2015)
2) Sugimura et al., Eur. J. Mass Spectrom., 21, 725-731 (2015)
14:15~15:15
・早川滋雄(大阪府立大学)
「イオンの構造解析における高エネルギー衝突の特徴と今後の可能性」
かつては、日本で製造された高エネルギーイオンを分析するセクタータイプの質量分析装置が世界を席巻していた。昨今は、低エネルギーイオンを対象とするトラップタイプの質量分析装置が主流を占めている。セクタータイプは大型化しないと高分解能が得られないため、そのシェアはほとんどないが、高エネルギーイオンを分析する飛行時間質量分析法(TOF)では、直交加速とマルチターンの組み合わせにより、比較的小さな装置で高分解能が得られている。
 イオンの構造解析において用いられている解離法は、高エネルギーと低エネルギーで大きな違いがある。この相違を化学反応の原理的な違いから説明する。特に高エネルギーの反応では、一回の衝突で励起が起こるため、装置依存の非常に少ない解離法である。このことについてデータを用いて説明する。次に現在開発中の高エネルギー電子移動解離が可能な高分解能TOF/TOF装置について解説し、今後の可能性についても議論する。
15:15~15:30
Coffee brake (15分)
15:30~16:30
・中村健道(理化学研究所)
「有機イオンの化学とフラグメンテーションのあれこれ」
MS は分析科学の一分野であると同時に,気相イオン化学の実験室でもある.市販装置を用いた分析化学的な応用(あるいは日常的なルーチン分析)の中にも,様々な興味深い化学が潜んでいる.「教科書」に記載されていないような「不思議な」(奇妙な)イオンの挙動は見過ごされたり無視されたりすることも多いものと想像される.解釈の誤りにつながりかねない場合もある一方で,分析的に有用な情報が得られる場合もある.分析化学者の視点からとらえた有機イオンの化学とフラグメンテーションについてあれこれ四方山話的に話題提供させていただき,諸先輩,諸先生方に議論願いたい.
16:30~17:30
・笠間健嗣(東京医科歯科大)  退職記念講演
「多様な生体分子の物性とイオン化、断片化、質量分離と検出:」
17:30~18:00
情報交換会
参加申込み:
参加希望の方は、 (1)氏名、(2)所属、(3)メールアドレス、(4)会員/非会員の別(5)外部懇親会の出欠 を添えて、 下記メールアドレスにお申し込みください。 ion15_%_mssj.jp (送信の際は、_%_を@に変えてください)
問合せ先:
山垣亮 (イオン反応研究会・担当幹事) ion15_%_mssj.jp (送信の際は、_%_を@に変えてください)
参加費:
1,000円
懇親会:
同日19:00から会場近隣にて開催予定
会費:5000円(予定)
講演会後会場を変えて、笠間先生を囲む懇親会を企画しております。講演や情報交換会だけでは十分にお話できないこともあろうかと思います。是非大勢の方にご参加いただき、笠間先生や参加者同士親睦を深めていただければと思います。
イオン反応研究会幹事:
山垣 亮 (サントリー生科財団)(第66回担当幹事) 菅井俊樹(東邦大)、名越慶士郎(横浜市立大学)、笠間健嗣(東京医科歯科大)、チェンリーチュイン(山梨大学)、早川滋雄(大阪府立大)、竹内孝江(奈良女子大学)、本山晃((株)資生堂)(部会長)
関東談話会世話人:
寺本華奈江(世話人代表,日本電子(第144回世話人)),七種和美(広島大学),澤 竜一(微生物化学研究所),新保和高(味の素),野沢耕平(積水メディカル),林雅宏(浜松ホトニクス),星貴洋(日本化薬)