シリーズ「基礎から学ぶマススペクトロメトリー/質量分析の源流」

Web公開に際してのご挨拶
2007-2008年度出版委員会委員長 平岡賢三

質量分析(mass spectrometry: MS)は、多くの分野に普及し、科学技術社会において計りしれない影響力を持つ機器分析法としての一翼を担っています。MSでは、装置の開発、新しいイオン化法の開発、各種イオン化法から得られるマススペクトルからの情報抽出、などが研究の主な内容となります。これからの科学技術社会においてさらなるMSの発展を図るためには、分野横断的な展開は必然として、まずMSがよって立つところの基礎知識の強化を図ることが先決です。この基礎体力強化により、MSを通して我が国の科学技術イノベーションを強力に推進することができます。
 20世紀後半には、MSに関連する基礎学力の涵養に必須な内容の出版物が多く刊行され、MSの発展に大きな恩恵を与えてきました。しかし、これらの出版物のほとんどはいまや絶版となり、入手困難となってしまいました。このような状況に鑑み、日本質量分析学会(MSSJ)では、次世代MS発展の原動力となり得る基礎的内容を取り扱う書籍の刊行をかねてより計画して参りました。
 日本質量分析学会出版委員会では、平成13年12月に初心者むけの“マススペクトロメトリーってなあに?”を発刊しました。また、平成19年12月には、J. H. グロス著、“マススペクトロメトリー”(Springer)の翻訳書を刊行しました。この本は、詳細かつ網羅的で、総合的に大変すぐれた著書です。応用のベースとなる工学基礎に関しても記述がなされています。しかし、さらに理学領域にまで踏み込んだ内容に関しては多くは触れられていません。次世代MSを創生するためには、MSの基盤を形成する基礎を深く掘り下げた内容の刊行物出版が強く望まれるところであります。それは、創造という主題を考える上で、物事の原理的コンセプトの把握が重要だからです。  この度の解説のシリーズ、“基礎から学ぶマススペクトロメトリー”(出版物として刊行予定)は、副題にもありますように、“質量分析の源流”に遡ることを目的とするものです。これまでMSSJが刊行してきました著作物とともに是非とも座右の書としてご愛読いただき、次世代MS発展の糧としていただきたいと念じております。
「基礎から学ぶマススペクトロメトリー/質量分析の源流」

第1回 衝突論(早川滋雄)

第2回 超励起状態(河内宣之)

第3回 ペニングイオン化(鵜飼正敏)

第4回 光イオン化法の特徴(田中健一郎/小谷野猪之助)

第5回 内殻励起反応(和田真一/田中健一郎)

第6回 気相移動度(菅井俊樹)

第7回 イオン分子反応(平岡賢三)

第8回 エレクトロスプレーの歴史的発展(能美 隆)

     エレクトロスプレーの基礎(平岡賢三)

第9回 SIMS、クラスターSIMS、帯電水滴衝撃SIMS(平岡賢三)

第10回 同位体の質量分析(長尾敬介)

第11回 イオントラップ(岩本賢一)